雨上がりの景色を夢見て
私の知っている触られ方ではなくて、目の前にいる高梨先生は大人なのだと、当たり前のことなのに、今更思った。

「髪の毛巻いてるの、とても似合うよ」

頭上から聞こえる声に、変な緊張感が走る。大きな鼓動は、きっと高梨先生に聞こえているのだと思うと、恥ずかしさを感じた。

私を解放して、立ち上がると、地面に転がった缶を拾った高梨先生。

「すいません…」

「気にしないで。それより雛ちゃん…、明日、家に遊びにおいで」

「えっ…」

高梨先生はもう片方の手に自分の飲み終わった缶を持った。

「夏奈に、会いに来てほしくて。すごく喜んでくれると思うんだ」

照れ臭そうにそう言った高梨先生を見て、今までとの関係が変わったことを改めて実感する。

「はい」

「迎えに行くから、待ってて」

高梨先生はとても嬉しそうにそう言うと、ゴミ箱に缶を捨てて、私に手を差し出した。

その手に、私も自分の手を重ねる。駅に向かうまで、会話は少なかったけれど、心はすごく満たされていた。

私達は、それぞれ別方向の最終電車に乗って家へと帰った。


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