雨上がりの景色を夢見て
電車に揺られながら、少し前に見た貴史の夢を思い出す。

私の弱さを見せれる場所、自然体でいられる場所。

そう考えた時、今即答できるその場所が、高梨先生の前だという事に気がついた。

貴史のお母さんの言葉を思い出す。

〝貴史のいたずら〟

貴史は気がついていたのかもしれない。

私、貴史のいたずらに甘えるよ…?甘えて、甘えた分だけ、幸せになる姿を見せてあげられるといいな…。














朝、起きて、そういえば迎えに来ると言ったけれど、高梨先生と連絡先を交換していなかった事に気がついた。

私の家は知っているけれど、部屋番号までは知らない。

私が電車を使って行った方がいいのかな。でも待っててって言ってたし…。

そんな事を考えていると、スマホに登録されていない番号から着信があった。

きっと、高梨先生。

「中川です」

『おはよう。雛ちゃん、高梨です』

電話越しに聞こえたのはやっぱり高梨先生の声。

『ごめん、考えたら、俺、雛ちゃんの連絡先知らなかったんだよね。夏奈に聞いた』

「いえ、私も気がつかなくて」

『9時にマンションの前に迎えに行くから、待ってて』

「はい」

『また後で』

後ろで夏奈さんの声がした気がしたけれど、うまく聞き取れなくて、そのまま電話が切れた。

今は7時50分。少し急いでシャワーを浴び直せば十分間に合う。


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