雨上がりの景色を夢見て
シャワーを浴びながら、肩の傷に手を添える。

恋人同士になったということは、いつかはこの傷を高梨先生は目にする。

驚くよね…。嫌にならないかな…。

そんな不安が頭をよぎる。

髪の毛を乾かし、今日着ていく服を選ぶ。今日は猛暑日とニュースでやっていたことを思い出し、軽い生地のシャツワンピースにした。

髪はコテで巻き、後ろで1つに束ねて、首元の風通しを良くする。

あっ、今日って…

「…誕生日」

昨日のことで、すっかり忘れていた。こんな大切な日に、私が家にお邪魔してよかったのか心配になる。

でも、高梨先生の、夏奈さんが喜ぶと思うという言葉に嘘はないと思う。

約束の時間5分前に下に降りる。マンションの前に高梨先生の通勤用の車が止まっているのを見つけて歩み寄る。

私の姿に気がつき、車を降りた高梨は片手を上げて私に挨拶すると、助手席のドアを開けてくれた。

「おはようございます」

「おはよう。行こうか」


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