雨上がりの景色を夢見て
私が乗った事を確認して、ドアを閉じる。すぐに運転席に乗った高梨先生は車を走らせた。

「高梨先生、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう。聞かれる前に言うけれど、誕生日に家に来る事に遠慮しなくていいから。夏奈なんて、一緒にお祝いできるって喜んでたよ」

やっぱり、高梨先生は私の考える事お見通しなんだ。

「はい。…でも、もしまだ準備してないのであれば、ケーキは私に買わせて下さい」

家を出る時に、そう決めていた。

「雛ちゃんらしいね。ちょうど、これから買いに寄るところだったから、じゃあお任せしようかな」

笑いながらそう言った高梨先生の言葉に、ほっとした。手ぶらで行くのはやっぱり気がひけるから。

「はい」

2人のためにケーキを選べる事が嬉しくて、思わず笑顔になる。

「…俺、こんな幸せでいいのかな…」

ぼそっと呟いた高梨先生の言葉がうまく聞き取れなくて、高梨先生の横顔を見る。

「…ちょっと待って。今あんまり見ないで」

「えっ…?」

高梨先生の顔が少し赤くなっている事に気がついて、私まで恥ずかしくなる。

こんなに動揺している高梨先生を見たのは初めてだった。

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