雨上がりの景色を夢見て
「…本当に一緒に選ばなくていいの?」

ケーキ屋さんの前で、車から降りる私に再度確認する高梨先生。

「はい、食べる時のお楽しみにしておきたいので」

私はそう言って、ケーキ屋さんに入った。

甘い匂いに包まれて、幸せな気持ちになる。ホールケーキの並ぶショーケースに近づき、中に入っているケーキを眺める。

ふと、目に止まったのは、ピンク色のお花の形をしたクリームでデコレーションされている華やかなケーキ。3種のベリーがたっぷりのっていて、とても美味しそうだった。

「このケーキに、お誕生日プレートつけてもらえますか?」

店員さんにお願いして、描いてもらいたい文字をメモする。

5分ほどして、箱に入ったケーキを手に持って、お店を出た。

「嬉しそうだね」

助手席に座った私を見て、高梨先生が言った。

そんなに表情に出てたかな、と思いながらシートベルトをして、しっかりとケーキの箱を膝の上で抱える。

「素敵なケーキがあったからだと思います」

「それは楽しみだ」

高梨先生はにっこり笑って、再び車を走らせた。

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