雨上がりの景色を夢見て
「寂しくなかったですか…?」

「うーん、寂しかったとは思うけど、そう思わせないくらいのテンションの母さんがいたから」

「そうそう、寂しいなんて言ってる暇なんてなかったわ。それにね、あんな感じのお母さんだけど、厳しくするとことは結構厳しかったのよ」

2人はそう言うと、懐かしむような表情でお茶を口に運んだ。

それぞれの家庭で、いろんな考え方や雰囲気があるのだと、改めて実感する。

「あら、こんな時間。ちょっと1時間半くらい出てくるわ。実は職場で最近流行りのオイルマッサージのお店の割引券もらったのよ。前から予約入れてて」

「そうなの?」

「うん、今日のは本当」

夏奈さんの言葉に、昨日のことを言っているのだとピンときた。

夏奈さんは、あらかじめ準備しておいたカバンを持って、すぐに出かけて行った。

「せっかく来てもらったのに、ごめん」

申し訳なさそうに謝る高梨先生に、私は首を横に振る。

2人きりのリビングに少し緊張感が漂い、沈黙が続いた。

「さっきの話だけど、雛ちゃんのお父さんとお母さんのお仕事聞いてもいい?」

「はい」

そう返事をしたけれど、仁さんとの関係も話した方がいいのか一瞬迷った。けれど、高梨先生には私の今までの家庭の環境も知っておいてほしいと思って、話すことにした。

「母は、昔は大手の会社で働いていたんですけど、仁さん、今の父と再婚してからは専業主婦です」


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