雨上がりの景色を夢見て
受付のスタッフの後ろから、スーツ姿のスラっとした背の高い男性が入ってきた。

「こんにちは…。圭介、怪我したって?」

軽く挨拶をして、お兄さんはすぐに上田くんに近づき、青く腫れた手首を見た。

「お兄さんですか。弟さんは手首を複雑骨折していて、手術が必要です」

「えっ、…そうですか…。今日手術するんですか?」

「いえ、今日はもう遅いので、明日の午前にします。明日、保護者の方に説明して、同意書に署名していただいてからの手術となります。今日はお兄さんに説明するので、ご自宅に戻られたら、お家の方に大まかな流れだけでも伝えていただけると、明日の説明がスムーズに進むと思われますので、よろしくお願いします」

お兄さんは、担当医師の言葉に「はい」と返事をして、扉近くにあった椅子を上田くんの隣に移動させて座った。








ガコンッ

「遅くなって、ごめんな。母さん、今日熱出てて、仕事早退して寝込んでたらしい。父さんは会議中らしく、全然つながらないし。母さんに頼まれて、ピンチヒッターで来た」

お会計で呼ばれるのを待っている間、待合室の自動販売機で飲み物を買いながら、お兄さんは上田くんに説明した。

お兄さんは、手に持ったスポーツドリンクの入ったペットボトルのキャップを開けて上田くんの目の前に差し出す。


< 22 / 538 >

この作品をシェア

pagetop