雨上がりの景色を夢見て
貴史がいなくなってから、誰かに甘えることを自分の中で許せなかった。孤独に耐えることが、自分への罰のようなものだと思っていたから。

だけど、貴史のお母さんや高梨先生に出会ったことで、自分自身を、解放してもいいのかなと思えるようになってきたことが1番大きな変化だったと思う。

解放したことで、今まで気づかないふりをしていたいろいろな感情が見えてきて、自分でも知らない自分と向き合うきっかけになっているのかも知れない。

ポンポン

えっ…

考え事をしていると、高梨先生が頭を軽く撫でてきて、高梨先生を見上げる。

「考え事、終わった?食べよう」

微笑む高梨先生の姿に、私もつられて微笑んで小さく頷いた。

あえて、何を考えていたのか聞かないところに、高梨先生の優しさを感じる。

「…先生、ありがとう」

「ん?どういたしまして」

お皿を運ぶ高梨先生は、お礼を言った私を不思議そうに振り返って、そう言った。




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