雨上がりの景色を夢見て
「雛ちゃん、誕生日いつ?」

ケーキを食べながら夏菜さんが尋ねる。

「3月3日です」

「へー、それで名前が雛?」

「はい」

高梨先生は納得した様子で頷き、ケーキをもう一口食べた。

「雛ちゃんのお誕生日もお祝いさせてね」

「ありがとうございます」








「いつも2人だけの誕生日だったから、今日はとっても嬉しかったわ。雛ちゃん来てくれてありがとう」

「こちらこそ、ありがとうございました」

玄関で夏奈と高梨先生に見送られて、2人のマンションを出た。もわっとしたアスファルトの熱に、じわりと肌に汗が噴き出る。

セミのなく声が、夏の暑さを強調させているような気がする。

ハンカチで額の汗を拭きながら、私は駅へと向かった。

「雛さん?」

後ろから聞き慣れた声がして、振り返る。

「あっ…修二くん。どうしたの?」

「俺、休日出勤の帰りです。ここ会社の帰り道で」

修二くんは、そう言って道路のずっと先を指差す。汗をハンカチで拭く修二くんは、ワイシャツにスラックスを履いていて、暑そうにしている。

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