雨上がりの景色を夢見て
ベランダから戻ってきた夏樹に、雛ちゃんが昨日くれたというワインのギフトを見せる。

「見て、おしゃれな瓶ね。赤と白どっちにする?」

「…白かな」

少し元気のない夏樹を見て、こんなに女の子に対して、一喜一憂するような性格だったかしらと意外に思う

そして、そうさせている雛ちゃんがすごいなと感心する。

夏樹が飲まない、と言った時のやりとりでも思ったけれど、雛ちゃんは結構気が強い。

気が強い、というより、自分のことで、相手が好きなこと我慢するのをとても嫌がっているように見えた。

それは、元々の性格なのか、10年近く孤独と戦ってきたからなのかは分からないけれど。

ワイングラスに白ワインを注ぎ、薄くスライスしたチーズとピクルスを小皿に盛り合わせて、夏樹の前に置いた。

「はい、雛ちゃんの持ってきた白ワイン」

「…からかってるだろ」

そう言いながらも、早速白ワインを味わう夏樹。

「あー、うまい」

満足そうな表情に、もう大丈夫だと確信して、洗い物を始めた。

雛ちゃんは、結構、無防備なんだと思う。そんな雛ちゃんに、夏樹は翻弄されていて、私としては見ていると、とても新鮮。

「私も、ジュース飲もうかな」

冷蔵庫から、雛ちゃんから貰ったぶどうジュースを取り出し、雰囲気だけでもと思ってワイングラスに注ぐ。

夏樹の向かい側に座って、チーズを1切れもらって口に入れた。







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