雨上がりの景色を夢見て
部活指導の後の、自分達の仕事や、体育祭や文化祭の行事の準備で常にやることがたくさんある印象だった。

あっ…

「そういえば、9月に文化祭あるんですよね?招待券持ってれば一般の人も入れるって聞いたんですけど…」

「そうよ。圭介くんから貰えば、当日入れるわ」

「じゃあ、俺行こうかな。圭介の様子も見てみたいし」

俺がそういうと、フッと雛さんの表情が柔らかくなった。

「弟想いね」

「…離れてた時間が長かったからですよ」

雛さんの表情に、内心ドキドキしながらも、平然を装う。

貴史くん…ごめん。俺、この気持ち隠し通せるか不安になってきた。

「そういえば、圭介くん、怪我から復帰して順調のようね」

思い出したように、雛さんが圭介の話に触れた。

「練習試合でヒットも打ったって聞いたわ」

「顧問の先生に?」

そう聞き返して、練習試合の日は帰りが遅かったし、昨日、今日は土曜日だったから、いつ聞いたのだろうと、疑問に思った。

「ええ。褒めてたわよ」

淡々と答える雛さんに、昨日、休日出勤でもして学校でたまたまあったのかな、と思い直す。

ただ1つ気掛かりだったのが、顧問は高梨先生だったということ。あの日、雛さんが体調を崩した時に送って行った事を思い出し、心の中にモヤモヤしたものが湧き上がる。


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