雨上がりの景色を夢見て
第9章 青春の中の思い出
だいぶ過ごしやすくなった9月中旬。2週間後に迫った文化祭に向けて、放課後の校舎内が賑やかになる時期。
開けっぱなしの扉から、廊下を行き来する生徒たちの姿が見える。
保健室で仕事をしながら、この時期に多い、金槌やカッターなどでの怪我をしてくる生徒の対応に備えていた。
高梨先生とは、校内では日中ほとんど遭遇することはない。それは付き合う前からもそうだった。
放課後、生徒達がほとんどいなくなって、職員室に戻った時に、少し話をするかしないか程度。
お互い特に相談はしていなかったけれど、自然とそういう関わり方を継続している。
「先生…指切った…」
3年生の女子生徒が指を押さえながら、開けっぱなしの扉から顔を覗かせる。
「あらあら、結構血が出てるわね。傷口見せて。カッター?」
涙目で頷いた女子生徒は、3年A組の石田梅さん。傷を抑えていたハンカチをそっと外す。
「ちょっと深いわね。でも縫うほどではないから安心して」
処置をする私の手元を、鼻をすすりながらじっと見つめる石田さん。
「石田さんのクラスは何をするの?」
「…お化け屋敷です。先生も当日来てくださいね?」
「…先生、怖いの苦手なのよね…。入るのは遠慮しておくけど、石田さんの頑張りは見に行くわ」
お化けが怖いというより、暗闇になってしまうことが懸念する理由だった。
「先生、怖いのダメなんだ。意外」
処置の終わった石田さんは、すぐに立ち上がり、
「ありがとうございました」
と、丁寧に頭を下げて保健室を後にした。
開けっぱなしの扉から、廊下を行き来する生徒たちの姿が見える。
保健室で仕事をしながら、この時期に多い、金槌やカッターなどでの怪我をしてくる生徒の対応に備えていた。
高梨先生とは、校内では日中ほとんど遭遇することはない。それは付き合う前からもそうだった。
放課後、生徒達がほとんどいなくなって、職員室に戻った時に、少し話をするかしないか程度。
お互い特に相談はしていなかったけれど、自然とそういう関わり方を継続している。
「先生…指切った…」
3年生の女子生徒が指を押さえながら、開けっぱなしの扉から顔を覗かせる。
「あらあら、結構血が出てるわね。傷口見せて。カッター?」
涙目で頷いた女子生徒は、3年A組の石田梅さん。傷を抑えていたハンカチをそっと外す。
「ちょっと深いわね。でも縫うほどではないから安心して」
処置をする私の手元を、鼻をすすりながらじっと見つめる石田さん。
「石田さんのクラスは何をするの?」
「…お化け屋敷です。先生も当日来てくださいね?」
「…先生、怖いの苦手なのよね…。入るのは遠慮しておくけど、石田さんの頑張りは見に行くわ」
お化けが怖いというより、暗闇になってしまうことが懸念する理由だった。
「先生、怖いのダメなんだ。意外」
処置の終わった石田さんは、すぐに立ち上がり、
「ありがとうございました」
と、丁寧に頭を下げて保健室を後にした。