雨上がりの景色を夢見て
私が暗闇を苦手なのを知っているのは、貴史と、そして高梨先生。

高校2年生の時、修学旅行で行ったテーマパークのことを思い出す。

まだ、私が暗闇が苦手なことを知らない貴史に遠慮をして、暗闇を探検するアトラクションに一緒に乗った時のこと。

『へー、結構、何も見えないんだね』

姿が見えず、声だけが頼りの空間。隣に座る貴史の声が近いことが唯一の安心材料だった。

『雛、さっきから話さないけど…大丈夫?』

『…うん』

『体調悪いの?』

『ううん』

集中していないと、怖くて震えてしまうそうで、貴史の問いかけにも一言でしか反応しない。

こんなにいつも以上に素っ気ない態度をとってしまうなら、最初から正直に伝えておけばよかった、と後悔する。

『…もしかして、怖いの苦手?』

『…うん。怖いのと言うか…暗いのが』

『ごめん。気がつかなくて』

『…ううん。私が言わなかっ『ガクンッ』

『きゃっ』

急に動きが激しくなった動きに、私は思わず隣の貴史の制服に思いっきりしがみつく。

同時に、私の耳に貴史の鼓動が聞こえて来て、その速さに驚いた。

『…大丈夫』

貴史がそっと私の肩に手を回して、抱き寄せるかたちになった。

『でもさ…帰り道暗いのは大丈夫なの?』

『うん…外は大丈夫なんだけど、建物の中だと駄目みたい…』

何故なのかは分からないけれど、小さい頃からそうだった。



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