雨上がりの景色を夢見て
どのくらいの時間、泣いていたのだろう。

窓から差し込んでいた光は消えていて、外は薄暗くなっていた。

重い体を動かして、立ち上がる。電気をつけ、カーテンを閉めて時計を見ると、20時近かった。

もう一度、手紙を読み直す。また目が熱くなり、ティッシュで溢れそうな涙を拭く。

〝安心できる場所〟

この言葉は、夢の中の貴史も言っていた。あの頃の私は、貴史の隣以外考えられなかったから、この言葉を受け入れられなかったと思う。

だけど、今は…

涙の溢れる目をティッシュで抑えながら、スマホを手に取る。

この声では、電話はできないと思い、メッセージを打った。












『先生、会いたい』











ピンポーン

インターホンの音に、モニターを確認する。

えっ…

メッセージを送って数分しか経っていないのに、モニターに映ったのは高梨先生だった。

玄関に行き、ロックを外して扉を開ける。

少し息の切れた高梨先生が、玄関に足を踏み入れて、私の体を両腕で包み込む。

バタンッという玄関の扉の閉まる音が、静かな部屋の中に響いた。

「…なんで」

「…大人ぶって待ってるって言ったけど、1人で泣いてるんじゃないかって心配になって近くまできたんだ。…だけど、1人で考える時間も必要だと思い直して、やっぱり帰ろうとしたところだった…」




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