雨上がりの景色を夢見て
あの頃の修二くんは、背もまだ私と同じくらいか少し小さいくらいで、まだ顔も幼く、尻尾を振る子犬のように、貴史の周りにいつもいた。

学年が1つ下の修二くんは、貴史がテニス部だからという理由で、すぐに入部を決めるほど、中学の頃から慕っていたらしい。

「雛さんが目の前にいる。めっちゃ嬉しい」

目をキラキラ輝かせ、屈託のない笑顔で私を見る修二くん。

「あっ、連絡先聞いてもいいですか?今度ゆっくりメシでも行きましょうよ」

そう言ってスーツのポケットからスマホを取り出す。

嬉しそうににこにこしている修二くんにつられ、私も自分のスマホを取り出した。

ちょうど連絡先を交換し終わって、外で電話をしていた上田くんが戻ってきた。

「母さん、熱下がったみたい。帰ったら、兄ちゃんから詳しく話聞くって」

「そっか。あっ、呼ばれた」

お会計のスタッフが呼ぶ名前に気が付き、修二くんはスタッフの方に向かっていった。

上田くんも慌てて修二くんの後をついていく。二人の後ろ姿を見て、私の知っている修二くんのお兄さんらしい一面が微笑ましく感じた。

私は、スマホに入った修二くんの連絡先に視線を落とす。


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