雨上がりの景色を夢見て
噛み付くようなキスに、私の脚の力が抜けそうになる。腰にまわされた先生の腕が私を支える。

「…先…っ…生」

息がうまくできなくて、苦しくなりながらもやっとのことで呟いた。

一瞬だけ唇を離した高梨先生は、潤んだ目で私を見つめて、

「…もう少しだけ…」

と呟くと再び唇を重ねる。今度はゆっくりと優しく。

ぼーっとする頭で、これが大人のキスなんだとドキドキしながら思う。

ゆっくりと腕の中から解放されて、身体が離れた。

「…先生、上がって下さい」

「…うん、おじゃまします」

高梨先生を家の中に招くのは初めてで、恥ずかしさが出てくる。

靴を脱いで、踵を丁寧に揃えた高梨先生は、私の少し後ろを歩いてリビングに入ってきた。

「お茶いれますね」

「ありがとう」

貴史からの手紙を封筒に入れて、棚の引き出しにしまう。一瞬、高梨先生の視線が気になったけれど、私の様子に気がついた先生は、

「雛ちゃんの大切な物だから、気を遣わないで」

と言い、ソファーに座った。

そんな気遣いに、私はいつも助けられていると思いながらキッチンに立ち、お湯を沸かす。

椅子に座る高梨先生の姿に、唇に残る感覚が蘇り、自分の顔が熱くなるのを感じた。

高梨先生の、男らしさを感じた瞬間でもあり、少し強引なキス驚いたのは事実だった。




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