雨上がりの景色を夢見て
「紅茶好きなの?」

キッチンに立つ私の後ろの棚に並べられた紅茶を見て、高梨先生が尋ねる。

「はい、その時の気分に合わせて飲むのが好きで…」

「そういうところも、夏奈に似てるな」

夏奈さんは、アロマのことかなと思い、私は頷いて後ろの棚を見た。

「高梨先生は、お好きな紅茶あります?」

「あんまり考えたことないけど、なんだったかな…そうそう、アールグレイとかは香りが好きかな」

私は、棚の真ん中にあったアールグレイの茶葉を手に取り、温めたポットにいれた。

「棚、見てもいい?」

「はい」

私の返事に、席を立ち私の後ろまで来た高梨先生。

「すごいな。見たことのない名前の紅茶もある」

感心する高梨先生の声が後ろから聞こえて、少し緊張する。

「高梨先生は、ワイン詳しいじゃないですか」

私の言葉に沈黙する高梨先生。返事がないことに不安になり、後ろを振り向いた。

「…先生…?」

高梨先生の考え込む姿に、失礼な事を言ってしまったのかもしれないと心配になった。

「あのさ…」

「はい」

「…プライベートの時に、先生って言うのやめない?」

「えっ…?」

予想もしなかった高梨先生の言葉に、今度は私が黙ってしまった。





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