雨上がりの景色を夢見て
パスタなら作れそうかな。いつも日曜日に食材を買い足しているから、今の冷蔵庫はスカスカ。

高梨先生も食べるのかな…。

「先生…夏樹さんも、パスタ、食べま…す?」

「雛ちゃんの手料理なら、喜んで」

嬉しそうな表情の高梨先生に、私の中のハードルが上がる。

だけど、いつも作ってる物以上に美味しいものなんて作れる自信はなく、いたって無難に、ナポリタンを作ることにした。

キッチンに立ち、野菜とウィンナーを刻む。パスタの茹で具合を確認しながら、フライパンで野菜を炒めた。

「…ほっとする光景だ」

「えっ…?ごめんなさい。聞き取れなくて」

フライパンの音で、高梨先生の声が上手く聞き取れなくて、聞き返す。

「いや、独り言」

そう言ってニコッと笑った高梨先生は、もう1度紅茶を飲んで、私の様子を優しい表情で見た。

高梨先生の視線に緊張しながらも、パスタを作り終えて、お皿に盛り付ける。

テーブルに並べると、高梨先生が嬉しそうに、お皿に盛り付けてあるナポリタンを見つめる。

「美味しそうだ」

「無難な味だと思うけど…」

私は、そう言いながら、フォークをお皿に手前に並べた。

「いただきます。…うん、美味しい」

その言葉に、ほっと胸を撫で下ろした。



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