雨上がりの景色を夢見て
「もうそんな時間…」

少し寂しそうな表情の雛ちゃんに、愛おしさが増して、俺の心臓が、大きく波打つ。

「明日、すぐに会えるよ」

正直、まだ一緒にいたい気持ちがある。けれども、今日色々あった雛ちゃんに手を出さないでいられる自信がなかった。

玄関で見送ってくれる雛ちゃんの頭を優しく撫でて、車へと向かった。

車にエンジンをかけ、走らせながら、夏奈とのやりとりを思い出す。










『…で、それで修二くんと2人で会うことに反対しなかったのね?…馬鹿ね、内心ヒヤヒヤしてるのに』

昼過ぎ、部活指導から帰って、シャワーを浴びた俺に、夏奈が呆れた口調で言い放った。

今日の夕飯に、雛ちゃんを誘いたいと言った夏奈に、歯切れの悪い返事をしたことで問い詰められ、事情を話した結果、案の定夏奈に呆れられた。

前に、ジェラート屋に修二くんと雛ちゃんが入って行った姿を見て、動揺した俺の様子を知っているから。

『…でもさ、貴史くんの手紙受け取らないわけにはいかないだろ』

『…もし、弱ってる雛ちゃんに、修二くんが優しく声をかけてさらっていったらどうするのよ』

『…まさか、そんなことないだろ…』

と言いながら、内心、夏奈の言葉にかなり動揺した。


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