雨上がりの景色を夢見て
正直、そこまで考えていなかった。ましてや、生徒の兄という関係だから、そんな疑いなんて持つわけもなく、ただ、男性と2人っきりで食事ところにモヤモヤしていただけだった。

『…まっ、雛ちゃんのことだから、ガードは硬いと思うけどね』

夏奈はそう言うと、俺の前に昼ごはん用に作った焼きそばを置いた。

『いただきます』

手を合わせてそう言い、空っぽのお腹に焼きそばをかき込む。

雛ちゃんは、今頃修二くんとご飯を食べているのだろう。雛ちゃんの事だから、手紙は家に帰ってから1人で読むのだと思う。

どんな内容かなんて、見当つかないけれど、きっと雛ちゃんは涙を流すだろう。

大切な人からの手紙なのだから。

気持ちの整理がつくまで待ってるとは言ったものの、俺自身が落ち着かない。

本当に1人にしていいのだろうか。孤独感が強くならないのか心配になった。

だけど、1人で考える時間も必要で、俺が目の前にいたら、あれこれ考えて、貴史くんの手紙と向き合えないとも思った。

答えの見つからない矛盾する考えを巡らせる。

『…夏樹、眉間に皺寄ってるわよ?』

夏奈の言葉にはっとして、夏奈の表情を見る。苦笑いで、キッチンで水を飲んで俺を見ていた。

『なんで、こんな余裕ないんだろ…』

思わず口から言葉が漏れた。


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