雨上がりの景色を夢見て
木の上にちょこんと座る姿に釘付けになる。もう1匹やってきて、2匹揃って奥の木へと移動していった。

「自然豊かですね」

「うん。ここがレストランなんだね。こっちに行くと展望台だ」

分かれ道の片方の奥に洋館が見えて、看板にはレストランの文字が書かれている。もう一方の道を歩いて進む。

「靴擦れしてない?」

隣を歩く私を気遣う高梨先生の優しさに、心が温かくなる。

「…大丈夫」

足は平気だけど、少しずつ体力を消耗してきて、体が重く感じる。

完全に、運動不足…。

そう思いながら、高梨先生のペースに合わせて歩いていると、さりげなく、私の手を握った高梨先生。

「もう少しみたいだよ」

驚いている間も無く、高梨先生はそう言って、ペースを落とし、私の手を引いた。お陰で、少し歩きやすくなり、私の足取りが軽くなる。

繋がれた手から伝わる体温が、心地良い。

すれ違うカップルや夫婦が、手を繋いだり、腕を組んだりしている光景を見て、私達もそういうふうに見えているのだろうなと思い、照れ臭くなった。










「ここだよ」

少し歩くと、広い展望台着いた。広がる絶景に、疲れが吹き飛ぶ。

「…すごい…」

秋晴れの青空との境界線に海が広がっている。反対側は、山々を背景とした街が一望できて、一箇所で色々な景色を見ることができる。




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