雨上がりの景色を夢見て
「あそこの砂浜が、駐車場から見えていた場所だね」

高梨先生の説明を聞いて、視線を移す。白っぽい砂浜が太陽の光でキラキラと輝いて見えた。

「あそこに見える建物が温泉宿で、昔家族で行ったところ」

「風情のある建物ですね」

昔ながらの木造の作りで、周りの建物とは雰囲気の違う宿。大きな建物で、敷地の広さが一目で分かった。

「露天風呂から見える景色も綺麗だったよ。いつか一緒に来よう」

そう言ってくれたことが、素直に嬉しくて、隣の高梨先生の表情を伺う。

私の視線に気がついた高梨先生も、私の方を見てニコッと微笑んだ。海を背景にした高梨先生の笑顔が眩しくて、私の心臓がドキドキした。

「…はい、楽しみにしています」

そう答えて、私は誤魔化すように、視線を街並みに移した。

「雛ちゃん」

名前を呼ばれて、反射的に高梨先生の方を向く。

その瞬間、目の前に高梨先生の顔が近づき、唇が重なった。

すぐに離れたけれど、唇に残る感触の余韻に、私は思わず唇に手を当てる。

「…可愛いから、つい」

照れている高梨先生につられて、私の顔がほてる。

高梨先生は、結構キスをしてくる。それも、不意打ちに。

その度に、私の心臓はドキドキして、体が熱くなる。



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