雨上がりの景色を夢見て
ハンカチをしまうと、今度は波打ち際に、赤っぽい小さなカニが動いているのが見えて、海から上がる。

濡れた足に、細かい砂がついたけれど、特に気にせず、カニに近づく。

波にさらわれそうになっても、砂浜の上を一生懸命歩くカニに釘付けになってしまい、気がついたら、高梨先生から結構離れてしまっていた。

立ち上がって、私のサンダルを手にとって持ってきてくれる高梨先生。

「ご、ごめんなさい」

急いでかけよって謝ると、高梨先生は楽しそうに口を開いた。

「気にしないで。いつも以上にはしゃいでる雛ちゃん見れて嬉しいよ」

そんなにはしゃいでるように見えてたのかな…。ちょっと恥ずかしい。

「やっぱり、一緒に歩いてもいい？」

「はい」

返事をして、高梨先生から自分のサンダルを受け取る。私はもう少し砂の感触を楽しみたくて、裸足のまま歩いた。

「さっきは、カニ見てたの？」

「はい、久しぶりに海で見ました。あっ…小さなヒトデ」

足元にオレンジ色のヒトデを見つけて、立ち止まって手にとる。

貝殻と一緒にハンカチに包んで、またカバンにしまった。

その様子を見ていた高梨先生の手が、ハンカチをしまって顔を上げた私の前髪に優しく触れる。

「雛ちゃん、今、あのお願い２つ言ってもいい？」

微笑む高梨先生に頷いて、真っ直ぐ目を見つめる。

「まず、１つ目…」

波の音が聞こえる中、私の目を綺麗な瞳で真っ直ぐ見たまま、高梨先生は言葉を続けた。









「…俺と、結婚しよ」















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