雨上がりの景色を夢見て
時折漏れる彼女の吐息が、俺の理性のリミッターを外しそうになる。

1度唇を離し、彼女の瞳を見つめる。その瞬間、頬を涙がつたって、その涙を俺の指で拭った。

「…ごめんなさいっ…。幸せすぎて胸がいっぱいで…」

何度も、自分の手で涙を拭く彼女の姿に、胸が締め付けられる。

幸せすぎると言って、こんなに涙を流す雛ちゃんが愛おしい。こんなに純粋で、感受性豊かな彼女が今まで背負ってきた事を考えると、胸が痛んだ。

優しく彼女のおでこにキスを落し、頭を優しく撫でる。

「…帰り難いけど、また明日」

「…はい、また明日」

そう言って微笑む彼女のおでこにもう1度だけキスをした。










マンションに入る彼女の後ろ姿を見送って、車を走らせる。

時計を確認して、もう家に夏奈が帰ってきている時刻だと思い、家に着いたら、ちゃんと夏奈に報告しようと決心した。

「ただいま」

「おかえり。意外と早かったわね」

リビングのソファーに座って撮り溜めていたドラマを見ていた夏奈が、テレビを見たまま尋ねた。

「ああ、明日仕事だから…」

そう答えて、冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ビールとノンアルコールビールを1本ずつ取り出す。

戸棚から、ナッツの入った缶を取り出して、小皿に取り分けた。

ビールとナッツを持って夏奈の元へ向かい、テレビに釘付けの夏奈の目の前に缶を差し出した。

「あら、ありがとう」






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