雨上がりの景色を夢見て
「その様子だと、雛ちゃんからいい返事もらえたのよね?」

「ああ。でも、すぐに結婚ってわけじゃなくて、色々落ち着いてからって思ってる」

大和田さんや貴史くんのこと。そして、俺の両親はいいとして、雛ちゃんのご両親。あとは仕事との兼ね合い。

考えることはたくさんある。

「結婚しても、雛ちゃん仕事続けるんでしょ?」

「おそらく、そうだと思う」

冷静に考えて、同じ学校にいる間は、周囲への影響や子どもとの関係性を重視すると、結婚はできないと思っている。

そうなると、今年度いっぱいでどちらかが移動する事になるのが現実的だ。

まだ2校目の雛ちゃんがやっと慣れてきた頃に移動するとなると大変だと思う。そう考えると、俺が移動した方がいいような気がする。

「私は、学校の事情は詳しくないから何も言えないけど、雛ちゃんが義理の妹になるのがとても嬉しいわ」

夏奈が心の底から喜んでいることが表情から伝わってきて、色々考え込んでいた俺の気持ちが温かくなる。

「そういえば、文化祭くる?チケットあるけど」

まだ2枚手元にあり、誰に配ろうかと悩んでいるところだった。

「雛ちゃんに会いに行こうかな。でも忙しいのかな?」

遠慮がちに言う夏奈を見て、文化祭の開催要項を思い起こす。

「…確か、保健室待機だったような、うん。そうだった。体調悪くなった人の対応ができるようにって」

その資料を見て、1時間くらいは代わりの先生が待機してくれるとはいえ、文化祭をゆっくり見て回れないのが可哀想だと感じた覚えがあった。




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