雨上がりの景色を夢見て
「あら、もうこんな時間。藤永先生、少し校内回っていきませんか？」

時計を見て誘った夏奈さんに、藤永先生は優しく微笑んで頷く。

「そうしようか。楽しみだな。中川先生、それでは失礼します。夏樹くんとお幸せに」

藤永先生の言葉に顔が火照り、お辞儀をする。

「雛ちゃん、また家に遊びにきてね」

「はい」

夏奈さんと藤永先生の後ろ姿が見えなくなり、私は静かに椅子に腰掛けた。

藤永先生と夏奈さんお似合いなんだけどな…。

だけど、夏奈さんの心境を考えると、簡単ではないのだと思う。高梨先生の気遣いも嬉しいと感じつつ、自分の人生を大事にしてほしいと思っていた夏奈さんのことだから、自分の体のことと、藤永先生の人生について深く考えて、悩んでしまうのではないかと思えてしまう。

「…雨が降りそう」

灰色がかった雲が、さっきまでの青空を全て覆ってしまって薄暗くなってきた。

遠くで、ゴロゴロという雷の音が聞こえる。

せっかくに文化祭なのに。

そう思いながら立ち上がり、今度は温かい紅茶をカップに注いで、パソコンの前に座った。
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