雨上がりの景色を夢見て
次に、私からの仁さんへのプレゼントを選ぶ。菜子がハンカチを選んでいるときに、お店の奥に素敵なネクタイがならんでいるのを見つけて、同じお店で買うことに決めていた。

菜子の選んだ緑色のハンカチとお揃いになるように、深緑と黒のストライプのネクタイを選んだ。

輸入食品が売ってあるお店で、お気に入りのコーヒーと菜子の好きなお菓子を買い、パン屋さんへ向かった。

「いい匂い」

何種類もの焼きたてのパンが、ずらりと並んでいて食欲をそそる。菜子は目を輝かせて、美味しそうなパンを見つめている。

「菜子、食べてから帰ろうか」

イートインスペースが奥にあり、何種類か飲み物も頼めるため、たまに食べてから帰っている。

「うん!」

菜子の弾けるような笑顔に、胸がキュンっとなる。

すぐに、どのパンにしようか悩み始めた菜子。ころころ表情の変わる様子に、私はかなり癒されている。

「2つでもいい?」

「もちろん」

2つでも3つでも買ってあげる、と喉まで出かかる。けれど、母に『甘やかしすぎないでね』と頻繁に言われているため、我慢している。

仁さんと結婚して、菜子が生まれて、母はいい方向にがらりと変わった。今までの焦りや孤独感が無くなったのだろう。

心の余裕が出来たことで、とても表情が柔らかくなった。


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