雨上がりの景色を夢見て
そっと私の肩に、手が添えられる。

高梨先生の優しい手によって、上半身を起こされて、顔を上げた私の視界に入ってきたのは、優しい眼差しで見つめるおじさんの姿だった。

「私は、雛ちゃんに感謝してるよ」

おじさんの言葉が胸を締め付ける。

「…感謝?」

「うん。貴史とかけがえのない時間を過ごしてくれた事に。それは雛ちゃんと出会えたからだよ」

私の目から大粒の涙が何度も何度もこぼれ落ちる。

「…みんな…っ…どうしてそんなに優しくするんですか…っ…」

誰一人として、私を責めなかった事が、すごく苦しかった。だけど、ほっとしたのも事実。

ほっとした自分がいた事に、あの頃自分自身が許せなかった。

「それは、雛ちゃんといる貴史の幸せそうな姿をずっと見てきたからだよ。親ながら、高校生の付き合いで、あんなに幸せな時間を築いていた2人は素敵だと思ってたよ」

「そうよ。周りにいる私達がそう感じてたのだから、貴史はもっとそう思っていたんじゃないかしら」

おじさんとおばさんの言葉に、私は何度も何度も頷いて、ハンカチで涙を拭う。

「…私も…っ…幸せでした」

あの頃、素直に言葉に出来ていなかったことが沢山あったけれど、貴史といる時の私は、とても幸せな気持ちでいっぱいだった。





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