雨上がりの景色を夢見て
「はい。帰りにあんぱん買って帰ろうかって話してて…あっ…」

そこまで言って、高梨先生は話をやめて、一瞬私に方を見た。そして、再び貴史のお母さんとお父さんの方へ向き直り、話し始めた。

「ご報告があります。僕と雛さん、お付き合いをはじめました。将来を見据えた真剣なお付き合いです」

恥ずかしさと、2人がどんな反応をするのか不安になって目を逸らしたくなったけれど、今はしっかり前を向かないと、と思いおじさんとおばさんの表情を伺った。

2人は揃って穏やかに微笑んでいる。

「2人で来るって聞いて、そうだと思ってたわ。ね、お父さん」

話を振られた貴史のお父さんと目が合う。

「うん。今の雛ちゃんの表情見てたら、反対する理由なんてどこにも無いよ」

そう言って、お茶をすするおじさんの姿に、ほっと胸を撫で下ろした。

「実はね、お墓で会って以来、そうなったら嬉しいなって思ってたのよ。お父さんともそう話してたの」

えっ…

「雛ちゃんの反応で、あの時はそういう関係じゃ無いって分かってたんだけどね、2人ともとってもお似合いだったのよ?それに、美男美女。今頃やきもち妬いてるわよ、貴史」

冗談混じりにそう言って、ふふっと笑った貴史のお母さん。

照れ臭くなって、私も釣られて微笑む。



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