雨上がりの景色を夢見て

side 高梨兄妹

片付けをしながら、拭いたお皿を棚に戻す夏奈を見る。

妹が、主治医の藤永先生と結婚することが、いまだに信じられなくて、不思議な感じがしている。

でも、よくよく考えると、思い当たる節は結構あった。

入院中の夏奈に対する、藤永先生の接し方は、他の患者さんとは少しだけ雰囲気が違う気がしていたから。

2度の入院だから、すっかり打ち解けていたからなのかと、その時は思っていたけれど、特別な関係になった今だから、納得できる。

きっと、色々な患者さんと向き合ってきた先生だから、夏奈の病気や、今の身体に理解があるのだと思う。

きっと全てを受け入れ、夏奈の事を包み込んでくれると信じている。

ここ数日抱いていた、違和感がこの事なんだと繋がり、ほっとしている自分がいる。

「何よ、そんなに見つめて」

「いや…めでたいなって」

俺の視線に、怪訝な顔をした夏奈にそう答えると、嬉しそうに笑った。

「ふふ、ありがとう。夏樹もこれで安心?」

「えっ?」

夏奈の言葉に、内心ドキッとした。きっと全て見透かされていたんだと思う。



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