雨上がりの景色を夢見て
「何色が好み?」

探るように、俺に尋ねる夏奈。俺は、少し考えて、ワインをもう一口飲んだ。

「…何色でも似合うと思うから、雛ちゃんの好みで」

俺の言葉に、ふふふっと笑った夏奈は、俺に後ろに視線を向けた。

「だって、雛ちゃん」

えっ…。

慌てて振り向くと、タオルを肩にかけた、濡れた髪の毛の雛ちゃんが、恥ずかしそうに愛想笑いをしていた。

聞かれた…。

「ごめんなさい、聞くつもりはなかったんですが…」

「いいの、いいの。じゃあ私お風呂入ってくるから、2人でごゆっくり。雛ちゃん、また後でね」

夏奈は、すれ違い際に、雛ちゃんの肩をぽんっと叩いて、リビングを出ていった。

2人きりのリビングに、少し気まずい空気が流れる。

「飲む?」

「あっ、いえ。サワー飲んだらお腹いっぱいになっちゃって…」

「そっか。まぁ、夏奈が来るまで休んでて」

ワインを片手に持って、ソファーに近づき、雛ちゃんに座るように促すと、軽く会釈をして腰掛けた。

隣に座ると、濡れた髪から、ふわっとシャンプーの甘い香りがして、胸がドクンと高鳴る。

無意識に、手が、濡れた髪の毛に触れて、耳にかけた流れで、雛ちゃんの頬に触れた。

きめ細やかな肌に、化粧気のまったくない幼さの残る顔立ちに、触れたい気持ちが溢れ出す。

「あ、あの…夏樹…さん?」

明らかに動揺している目の前の彼女が、愛おしくて愛おしくて仕方がない。思わず、頬の筋肉が緩む。

「かわいい」

だいぶ酔いが回っているせいもあるのだろう。今だったら、多少恥ずかしい言葉もさらっと言えてしまう。






< 341 / 538 >

この作品をシェア

pagetop