雨上がりの景色を夢見て
お風呂から上がって、脱衣所を出ると、リビングから出て来た雛ちゃんとばったり会った。

「あら、雛ちゃん、先に部屋行ってる?」

「あっ、はい…」

少し火照った頬に、私は色々と察して、ニコッと笑い、口を開く。

「夏樹に意地悪されちゃった…?」

私の言葉に、雛ちゃんの顔が真っ赤になる。

「少ししたら、私も行くわね」

雛ちゃんは頷くと、自分の赤くなった頬を触りながら、私の寝室へと入っていく。

後ろ姿を見届けて、夏樹がいると思われるリビングに向かう。ガチャっと、扉を開けると、夏樹がワインの瓶をテーブルに出して、ワイングラスに赤ワインを注いでいた。

「…飲み過ぎじゃない?」

「んー…そうかも」

背中に言葉をかけると、眠そうな返事が返ってくる。

「…酔った勢いで、彼女に意地悪するとか、夏樹らしくないわよ?」

「…雛ちゃんと会ったんだ?」

私の方を振り向き、ソファーの背もたれに腕を置いて顔を腕に乗せた夏樹。

「ええ…。相当真っ赤だったわよ、顔」

「…これでも、頑張って抑えたよ、俺」

夏樹の悩む様子が新鮮で、思わずクスッと笑ってしまう。

「その焦らしが、かえって雛ちゃんには大人すぎる刺激になってるのかもね…」

「えっ…?」

「だって、そうでしょ?雛ちゃんが知っているのは、真っ直ぐな高校生の男女の付き合い方。焦らしたり、荒々しくしたり、でも、半分我慢したり。高校生はそんなに駆け引きはしないでしょ。まぁ、中にはそうじゃない人もいるでしょうけど」

私の言葉を、ぽかんとした様子で聞いている夏樹に、さらに言葉をつづける。




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