雨上がりの景色を夢見て
「そういうことではないと思うけど…」

酔っ払って思考の回っていない夏樹は、だんだん面倒臭いモードに入ってきた。

「そもそも、俺の魅力って…何？」

とろーんとした目で尋ねる夏樹に、ため息混じりに即答する。

「…知らないわよ。雛ちゃんに直接聞けばいいじゃない」

「冷たいこと言うなよ、夏奈さーん」

私の言葉に、大袈裟に肩を落とす夏樹の姿に、呆れて言葉が出ない。

「…もっと早く、出会いたかった」

えっ…

夏樹の言葉に正直驚いた。そう言う考えをあまり持たない人だと思っていたから。

「同世代だったらよかったのに…」

そう呟いた夏樹に近づき、何年かぶりに頭を撫でてあげた。

心の底の本音を吐かない夏樹が、珍しく弱音を吐いている。それも、普段の冗談半分のような弱音ではなく、夏樹の本心。

「同世代だったら、貴史くんのライバルになるわよ」

「…そりゃあ、まずいな」

私に苦笑いをして答えた夏樹の目は弱々しかった。

きっと、夏樹は雛ちゃんと恋人同士になって幸せを感じると同時に、心の底では不安と戦っているのだと思う。

雛ちゃんを傷つけないように、幸せにするという決意とプレッシャー。貴史くんと比較されることへの葛藤。

私にははかり知れない気持ちが入り混じっていると思うと、よく普段そう言う面を出さずに生活しているなと感心する。



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