雨上がりの景色を夢見て
第13章 隠れていた不安
「雛ちゃん、ちょっといい?」

夏奈さんの部屋で待っていると、扉の向こうから呼びかけられて、部屋の扉を開けた。

目に入った光景は、夏奈さんの肩に腕を回して立っているフラフラの高梨先生の姿。

「夏樹ほとんどもう夢の中なの。部屋まで連れて行くの手伝ってちょうだい」

「は、はい…」

もう片方の高梨先生の腕を自分の肩に回す。筋肉質な腕に、男らしさを感じながら、夏奈さんと一緒に部屋まで連れて行った。

初めて入る先生の部屋は、家具にほとんどが黒で、とても綺麗に整理整頓されている。

「夏樹、しっかりしてよ、もう」

「んー…」

ほとんど寝ている酔っ払っている姿が意外すぎて、思わず夏奈さんの顔を見た。

夏奈さんは苦笑いで、高梨先生を少し雑に扱い、ベットに寝かせる。

「こんな夏樹、滅多にないんだけどね」

腰に手を当てて、トントンとたたいて軽くストレッチをした夏奈さん。

「じゃあ、雛ちゃん戻りましょう」

「はい」

夏奈さんの後をついて、部屋を出ようと体の向きを変えた時、私の腕が突然引っ張られた。

えっ…

半分寝ぼけている先生が、私の手首をしっかりと掴んでいる。

扉付近にいる苦笑いの夏奈さんの顔と、掴まれた手首を交互に見る。

「…もう」

呆れた様子でそう呟くと、夏奈さんは私の元に戻ってきて、手首を外そうとしたけれど、なかなか離れない。

「もう…夏樹ってば」

しゃがんで、ベットに顔を伏せて寝ている高梨先生の後頭部に目線の高さを合わせた夏奈さん。


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