雨上がりの景色を夢見て
まだ付き合って日は浅いけれど、出会ってからの先生を思い浮かべる。

「…とても寛大で、優しいところです」

「…もっと」

えっ…

後ろで呟かれて、わたしの胸がドクンとおおきく鼓動する。

「…あと…とってもかこいいところも…」

自分で言っておきながら、本人を目の前にして話すことがとても恥ずかしくて、顔が熱くなる。

「…他には…?」

「…もっとですか?」

「うん…まだ足りない」

甘えるように、私の後頭部におでこをコツンとあてた高梨先生の仕草にドキドキする。

「…大人な雰囲気があって…でも、たまに意地悪なところも…多分、魅力なんだと思います」

「意地悪なところも…?」

聞き返されて、私はこくんと頷く。すると、今度は、仰向けにされて、高梨先生が上からわたしを見下ろす形になった。

高梨先生の表情に少し切なさがあり、目線を逸らせない。

「…意地悪な俺も好き?」

頷いた私を見て、高梨先生はほっと安心した表情を見せた。そして、私の前髪をかき上げてゆっくりと呟いた。

「…雛…」

私の耳にかすかに届いた声。

初めて呼び捨てにされたこともあり、ドクンと心臓が大きくはねた。


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