雨上がりの景色を夢見て
「あっ、これとかいいんじゃないかしら」

夏奈さんが次におすすめしたのは、さっきと同じようにワンショルダーの水着に、ボトムスは太ももの半分くらいまで隠れるラップスカートのデザインの水着だった。

これなら肌の露出も先ほどより少ないし、肩も隠れる。それに、デザインがシンプルで、私好みだった。

「こういうデザイン、結構好きかもしれないです」

「じゃあ、明日似たような水着見てみましょう」

夏奈さんは満足そうにそう言うと、雑誌を重ねて片付け始めた。

ふと、夏奈さんの横顔に、やっぱり、いつ見ても綺麗だなと思った。同時に、夏奈さんが藤永先生と結婚するという現実を思い出した。

「…夏奈さんは、藤永先生のこと、いつから好きだったんですか?」

私の疑問に、キョトンとした目で私を見つめる夏奈さん。

雑誌を整えてデスクの上に置くと、私の隣に座った。

「…今まで、好きっていう感情があったのかは正直分からないわ」

えっ…

意外な返答に、今度は私が驚いて、夏奈さんを見つめる。

ふふっと笑った夏奈さんは、髪の毛をかき上げて、話し始めた。

「物腰が柔らかくて、とっても優しいお医者さんだなっていうのは、主治医になってもらってからずっと感じてたわ。いい印象しかないもの。文化祭の日にね、想いを伝えてもらうまでは、恋愛感情はなかったの」

やっぱり、夏奈さんは藤永先生の気持ちには気がついていなかったんだ…。

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