雨上がりの景色を夢見て
「私は自分の体にコンプレックスを抱いてたわ。ううん、今だってそう。だけどね、この状況を理解してくれている先生の言葉に、気持ちがグッと引き込まれたの。その言葉に嘘は感じなかったし、何より、この傷を、私の一部だって言ってくれたのが嬉しくて…」

夏奈さんは自分の下腹部にそっと手を当てた。

「優しさに甘えてるって言われてしまったら、否定はできないけど、だけどね、この人となら、コンプレックスを気にしない素敵な家庭を築けるんじゃないかなって思えたの」

ちょっと恥ずかしそうに微笑むと、夏奈さんは両手を天井に向けて伸ばした。

背中を伸ばして、手を下ろすと、私をもう一度見た。

「それにね、身体の相性も良かったわ」

ふふ笑った夏奈さんの言葉に、今度は私の顔が熱くなる。

「…夏樹って意地悪でしょ?」

「えっ…?」

夏奈さんを見ると、ふふっとだけ笑って、わたしの肩甲骨の辺りを指差した。

その意味を理解して、私の身体が一気に熱を帯びる。

「…大人ぶってるだけで、実際は、けっこう独占欲の塊よ?」

「そんなことは…」

フォローしようと思ったけれど、さっき腹部や腰回りにつけられた跡を思い出して、口籠る。

「夏樹の抑えがきかなくなって、そのうち食べられちゃうわよ?」

悪戯っぽく笑って、夏奈さんはベットに横になった。

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