雨上がりの景色を夢見て
私も夏奈さんが敷いてくれていた布団の上に横になる。

「ねぇ、雛ちゃん。貴史くんって、どんな人だったの?」

突然の、夏奈さんの口から出た貴史の名前に、私の心臓がトクンッと音を立てて鼓動した。

「…貴史は…とっても温かみのある人でした」

「大和田さんと一緒ね」

「はい。素敵なご両親に囲まれて育ってきたから、いつも誰にでも優しく接していたんだと思います」

「そうね」

お互いの声しか聞こえないけれど、私と夏奈さんの感じ方はきっと同じなんだと思えた。

「どっちから告白したの?」

「貴史からです。でも…私も元々彼の人柄に惹かれていたんです。素直に好意を持ってくれていて嬉しかったのを覚えています」

自然と、貴史の話をどんどん口にしている自分に気がつく。

「いつも、穏やかで、優しくて、人のことよく見ていて、些細な変化に気がつく人だったんです。でも、いざっていうときの決断力と行動力もあって。スポーツマンだったのもあると思うんですけど…」

「素敵ね。それじゃ、雛ちゃんが夢中になるわね」

「だから、そんなに素敵な人が、私を好きになってくれたことを不思議に感じる時があったんです」

きっと、貴史のことを好きだった女の子は周りにいたと思う。

表情豊かな可愛らしい同世代の女の子たちと比べると、私はあまり愛想も良くなく、かけ離れた雰囲気だった。


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