雨上がりの景色を夢見て
「…急にどうしたの?」

「今日、菜子とお買い物行ってくれたじゃない?…ふと、雛とお買い物したり、お誕生日会開いたりっていうような事してこなかったなって思い出して…。お母さん、自分のことばかりで、母親らしい事してあげれてなかった…」

母の言葉を聞きながら、心の中で、首を横に振る。

違う。母親らしい事、当たり前のようにしてくれていた。あの頃の私は、そんな事には目を向けず、ただただ、母を否定していた。娘らしくなく、生意気だったのは、私だった。

「…私の誕生日、いつもケーキ準備してくれてたじゃない」

距離もあり、すれ違いが多かったから、今みたいに面と向かってお祝いの言葉を伝えたり、パーティーのような事はしなかったけれど、仕事帰りにケーキを買ってきてくれていた。そして図書カードと一緒にリビングのテーブルに置いてあった。

本が好きだった私は、図書カードが貰えることは、素直に嬉しかった。


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