雨上がりの景色を夢見て
「大丈夫です…。今日はたまたま変な夢を見ちゃっただけで…」

そこまで言った私の身体は、高梨先生の身体にしっかり密着し、温かみのある腕に包まれた。

「…俺の部屋おいで。一緒に寝よ」

えっ…

「薄ら明るくして寝よう。大丈夫、こんな状況の雛に手を出したりしないよ」

穏やかな口調の高梨先生は、私の汗ばんだ前髪をかき分けて、優しく微笑んだ。

「…はい」

ほっと胸を撫で下ろして、そう答えた私を見て、もう一度前髪をかき上げて、そっとおでこにキスを落とした高梨先生。

「朝までまだ寝れるよ。行こう」

私の肩に手を添えて、一緒に部屋へと向かった。

部屋に着くと、真っ暗だった部屋の電気をつけて、明るさを調節してくれる高梨先生。オレンジ色の明かりに変わったところで、私の表情を見た。

「このくらいなら、平気?」

「はい。でも…夏樹さん寝れますか?」

「大丈夫。どこでも寝れるし、今日はまだお酒が入ってるからすぐ寝ると思う。おいで」

高梨先生は、ベットに腰掛けた私に両手を伸ばして呼ぶ。ゆっくりと近づいて、高梨先生の首にぎゅっと手を回した。

「おやすみ、雛」

「夏樹さん、おやすみなさい」

高梨先生のベットに2人で横になり、腕枕をしてもらう形になった。目の前にある、高梨先生の胸板にドキドキしながらも、少しずつ眠気が出てきた。

もう片方の手が、私の腰に周り、さらに抱き寄せられて身体が密着する。頭の上から、静かな寝息が規則正しく聞こえてきた。

温もりが心地よくて、あんなにさっきまで動揺していたのに、すぐに私は意識が遠のいて行った。



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