雨上がりの景色を夢見て
第14章 命との向き合い方
私は、今真剣な表情の母とテーブルを挟んで向かい合っている。

「菜子は?」

「仁さんと動物園に行ったわ」

そう答えて、母は私に一枚の写真を差し出した。

「雛、覚えてる…?」

その写真を目にして、幼い頃の記憶が少しずつ蘇ってきた。

「…私と…お父さんよね…?」

楽しいこともあったけど、離婚する直前は、もうほとんど話もしない冷え切った家庭だったのを覚えている。

「そうよ…。お父さんのことなんだけどね…」

母の表情から、深刻な話だと察して、私の心臓がドクンと跳ねる。

「…末期の肝臓がんで、今緩和ケア病棟に入院してるの…」

えっ…

「…死んじゃうの…?」

私の口から無意識に出た言葉だった。末期という事は、厳しい状況なのだと理解し、私の中での動揺が広がる。

20年近く会っていないけれど、血のつながりのある父親だからだろう…。

「余命、半年ですって…。そのことを言うために、直接連絡してきたの。どうやって調べたのかは分からないけど…」

そう言って、紅茶を一口飲んだ母は、小さく深呼吸をして真っ直ぐ私を見た。

「…その時、あの人、弱々しい声で言ったの」











「最期に娘に会いたいって」











「…私に…?」


私の心臓が大きく鼓動し、無意識のうちに僅かに手が震えた。

死と向き合うことへの恐怖があったから。


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