雨上がりの景色を夢見て
S駅の前のベンチに座って腕時計を見る。約束の時間の5分前。

自分が時間に遅れるのは、あまり好きではないから、余裕を持って家を出てきた。

「雛さん」

名前を呼ばれて、顔を上げると、ショッピングセンターで会った時とは別の私服姿の修二くんが、こっちに向かって歩いてきていた。

「こんばんは、修二くん」

「こんばんは。…なんか不思議な感じです。雛さんと飲みに行くの」

「何言ってるの。誘ったのは修二くんでしょう?」

そう言った私に、修二くんは照れ臭そうな笑顔を向けた。

だけど、修二くんの不思議に感じた気持ちが分かる。

お互い高校生の時とは、見た目も雰囲気も、全く違う。大人になって再会した私たちの間には、微妙な距離感がある。











「再会に、乾杯」

最近オープンしたという居酒屋に入り、一杯目をビールで乾杯する。

「あーうまい」

修二くんは、一気にジョッキ半分ほど飲み干して、気持ちの良さそうな声を出した。

「修二くんは、今も実家から通勤してるの?」






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