雨上がりの景色を夢見て
「雛…?」

掴んだ手が震えていて、その震えは、私の身体全体へと広がっていく。

「だめっ…私、寝ない」

「えっ…?」

私の目から、ボロボロと大粒の涙がこぼれて、シーツに染みを作っていく。

ここで寝たら、今度は高梨先生がいなくなってしまうような気がして、すごく怖い。

「今度は…夏樹さんが…っ…いなくなっちゃう」

絞り出した言葉は震えていた。

力を入れたせいで、点滴の針から、血液が逆流していた。

「…じゃあ…一緒に話をして時間を潰そうか…」

そう言いながら、私の力の入った手を、優しくほどき、ベットの上でそっと握ってくれた高梨先生。

私は何度も頷いて、もう片方の手で涙を拭った。

高梨先生は、そんな私の頭を優しくぽんぽんと撫でて、長い髪の毛が濡れた頬にくっつかないように耳にかけてくれる。

「お母さんから着信があって心臓が止まるかと思うほどびっくりしたよ…」

もう片方の耳にも、長い髪の毛をかけた高梨先生は、苦笑いでそう言った。

「ごめんなさい」

「…朝から体調悪かったの?」

今度は両手で私の頬を包み込んで質問する高梨先生。触り方が甘すぎて、私は動悸とは違う胸のドキドキが止まらなくなる。

「ううん。そんな感じはなかったけど…最近の食生活はあまり良くなかったと思っています…。それに…実は、昨日は寝れなくて…」



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