雨上がりの景色を夢見て
「雛…あえて、俺に何も言わないできただろ…」

図星を疲れて、ドキッと胸が跳ねる。何も言い返せない私を見て、高梨先生は私の頬から手を離すと、困ったような表情で私に言葉を続けた。

「雛、一緒に住もう」

「えっ…?」

驚いて、高梨先生の目を見つめる。高梨先生は、私の髪の毛に指をっとして掬い上げると、髪の毛に口づけをした。

「雛の近くにいないと、俺が落ち着かない」

そう言って、今度は私の額にキスをする高梨先生。

「…迷惑じゃないですか?」

「全然。それに、10月から夏奈は藤永先生と一緒に住むことが決まってるから、あのマンションに俺は1人だ」

夏奈さんが藤永先生と暮らすことにも驚き、私は高梨先生と目を合わせたまま瞬きをする。

ふっと笑った高梨先生は、椅子の背もたれに寄りかかると、ゆっくりと話し始めた。

「文化祭の代休以来、ゆっくり雛と話せてなかったと思って…。すれ違いが多かったなって、俺自身反省したよ。でもさ、今の生活だと、どうしてもそうなってしまう。だったら、帰る家は同じがいいなって思ってたんだ…」

先生の話を聞いて、私もそう思った。学校でも私は保健室にいる事が多く、高梨先生は授業が終わるとすぐに部活指導。あまり会うこともなく、1日が終わっていた。

もちろん、仕事中心の生活だから、それは分かりきっていたこと。






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