雨上がりの景色を夢見て
「はい。3月までは、大阪の支店に勤務してたんですけど、4月からこっちに戻ってこれる事になって、実家からの方が会社に近いから、実家暮らしです」

「そうなのね。お仕事は何関係なの?」

「スポーツ用品の営業です。奇跡的に、大手の会社に就職できて。勉強は全然できなかったけど、大会成績が考慮されたみたいで」

そうだった。修二くんは、一年生の時からレギュラー入りをしていて、さらに強化合宿にも呼ばれるほど、才能がずば抜けている選手だった。

同じく、強化選手に選ばれていた貴史でさえ、〝修二には敵わない〟と言い切るほどだった。

普段の子犬のような可愛らしい雰囲気の修二くんからは想像できなくて、意外だと思った事を、今でも覚えている。

「修二くん、テニス上手だったものね」

「逆に、テニスしかなかったんですよ、俺には」

そう言った修二くんはどこか寂しそうだった。

「でも、本当に雛さんが圭介の学校の先生だったなんて驚きですよ。『中川先生』っていう名前は耳にしてたけど、よくある苗字だし、まさか雛さんだとは思いませんでした」

「私も、驚いたわ。でも、圭介くんと顔がそっくりで納得したわ」






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