雨上がりの景色を夢見て
橙色のカーテンを開けると、細い点滴の管が腕へと続いている雛の姿が目に入った。

『雛…』

『貧血と心労だそうです。点滴が終わったら声かけてくださいね』

案内してくれた看護師さんは、そう言って仕事へと戻った。

椅子に座って、顔色の良くない雛を見つめる。

貴史くんのお墓参りの時みたいに、具合が悪いのに無理をしたのだろうか…。

それとも、お父さんと会って、心が疲れてしまうような出来事があったのだろうか。

良くないと思いながらも、俺の勝手な憶測が飛び交った。













雛の待つ病室へと行くと、ちょうど白衣を着た医者が雛と話をしていた。

「あっ、夏樹さん…」

俺に気づいた雛が、俺の名前を呼ぶ。振り返った医者は、俺を見ると頭を下げて、座るように促した。

医者は、俺が椅子に座ると、今度は雛ではなく、俺に向かって話し始めた。

「検査結果は、貧血以外は異常なかったので、鉄剤を処方しておきます。ただ、痩せすぎなところが気になるので、もう少し食生活見直すことが必要です」

「はい」

やっぱり痩せすぎなところが引っかかったんだな…。

それは、日頃俺も感じていた。良く食べる割には、華奢な身体だと思う。多分、食べる時と食べない時の差がすごくあるのだろう。




< 392 / 538 >

この作品をシェア

pagetop