雨上がりの景色を夢見て
病院を出て、駐車場に向かう。隣を歩く雛の歩調に合わせて、いつもよりもゆっくりと歩いた。

「夏樹さん…心配かけてごめんなさい…」

反省している様子の雛ちゃんの肩を、歩きながらそっと寄せて、頭をぽんぽんと撫でる。

ほんのり赤くなった表情で、ほっとしたように微笑む彼女に、俺の心が温かくなっていく。

本当に、大事に至らなくて良かった…。

「まずは、雛のマンションに戻って、泊まる準備をしよう」

「はい」

助手席に座る雛は、素直に返事をした。泊まる提案を素直に受け入れてくれてほっと胸を撫でおろす。

「まだ、体調万全じゃないと思うから、寝てていいよ。着いたら起こすから」

「…はい」

素直に返事をしたことから、雛自身も、自分の身体のだるさを感じているのだと悟る。

しばらく車を走らせると、すぐに雛は眠り始めた。

疲れてたんだな…。

雛が止まる準備をしている間、何か元気の出る食べ物を買いに行こう。

そう思いながら、赤信号で車を停めた時に、そっと頭を撫でた。

病院で目を覚ました雛は、俺がもう一度寝た方がいいと言った時に、焦ったように取り乱した。

その姿を見て、俺は何も考えず、軽率な発言をしてしまったと、瞬時に察した。

貴史くんを失った時と状況が似ていたから。

腕に刺さった針のことなんて気にすることなく、俺の腕を掴んだ雛の手の力の入れ方は驚くほど強かった。

「俺、いなくならないよ?」

眠っている彼女に、そう呟いて車を再び走らせた。


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