雨上がりの景色を夢見て
「雛ちゃん、本当に大丈夫なの?」

私は、隣で玉ねぎの皮を剥く雛ちゃんに声をかける。

「点滴のおかげで、すっかり良くなったんです」

私の心配をよそに、雛ちゃんはニコッと笑うと、綺麗に皮を剥いた玉ねぎをみじん切りにしはじめた。

夏樹から、一連の出来事を聞いた私は、雛ちゃんのぐったりした姿を想像していたため、照れ臭そうにしながらも顔色の良くなった雛ちゃんを見て心の底から安心した。

同時に、無理をしがちな雛ちゃんのことだから、無理をしているのではないかと探ってしまう。

「夏樹さん、みじん切り終わりました」

「ありがとう。これで下準備は終わりだから、あとは俺だけで大丈夫だよ。夏奈と一緒に休んでて」

「はい」

そう言った夏樹を見て、雛ちゃんの気持ちを汲みつつ、休んでもらえるように上手に促したなと感心した。

少しずつ、少しずつ2人の関係がより素敵なものになっている事が目に見えて分かり、とても微笑ましい。

「夏奈さん、藤永先生と一緒に住むんですね」

コーヒーを飲みながら、雛ちゃんが嬉しそうに言った。

私は、「ええ」と返事をして、同じようにコーヒーを一口飲む。





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