雨上がりの景色を夢見て
藤永先生とは、最初から結婚前提の付き合いだったから、お互いに直ぐにでも一緒に住みたいと思うようになっていた。

藤永先生のマンションは、夏樹と雛ちゃんの勤める学校から歩いてすぐの所にあるし、ここからだって車であっという間の距離。

引っ越すと言っても、そんなに大掛かりのものでもない。

「夏樹の一人暮らしになっちゃうかなって心配してたけど、雛ちゃんが来てくれるなら安心ね」

そう言うと、雛ちゃんは私の言葉に恥ずかしそうに微笑んだ。

やっぱり、雛ちゃんはよく笑うようになった。

その笑顔は、以前のような愛想笑いや硬くこわばった笑顔ではなく、ごく自然な笑顔。

「夏奈さん…」

「どうしたの?」

私の名前を呼んだ雛ちゃんだけど、言い出しにくそうにしていて、なかなか言葉が続かない。

「…男性を誘う時って、どうすればいいんですか…?その…夜とか…」

夏樹に聞こえないように、私にしか聞こえない小さな声で言った雛ちゃんの顔は真っ赤になっていた。

雛ちゃんの口から、そう言った類のものが出てくると思わず、私は内心かなり驚く。

冷静さを保って、コーヒーを一口飲み、雛ちゃんににこっと微笑んだ。





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