雨上がりの景色を夢見て
「夏樹には、素直に『一緒に寝よ?』って言うだけで伝わるわよ」

雛ちゃんの事が愛おしくて仕方がない夏樹にとっては、その言葉だけで充分リミッターを外す刺激になると思う。

触れたくて、触れたくて仕方がないのだから。

「…それだけでいいんですか?」

「ええ。でも、雛ちゃんが、もっと色っぽく誘惑したいなら、他の言葉も教えるけど…?」

ちょっと冗談混じりに言うと、雛ちゃんは、さらに真っ赤になって首を横に振った。

ちらっと、夏樹の様子を伺う。

フライパンで炒め物を作っているため、全く私たちの会話には気がついていない。

女子高生のように、真っ赤になるくらい想われていて、夏樹は幸せ者だ。

「極端な話すると、ぎゅって抱きつくだけで、夏樹のスイッチは入ると思うの」

私は、ふふふっと笑って、コーヒーと一緒にクッキーを口に入れた。

「私は、夕飯一緒に食べたら、藤永先生のところに行くわ。元々そういう予定だったから」

「えっ…」

私の言葉を聞いて、寂しそうに真っ直ぐ私を見る雛ちゃん。

胸がきゅんとなる。

「だから、遠慮しなくても大丈夫よ」

今度は真っ赤になった雛ちゃんを見て、ころころ表情が変わって面白いなと思った。



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